移植関連用語解説


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●50音順索引

ア行カ行サ行タ行ナ行ハ行マ行ヤ行ラ行ワ行ABC順



ア行


アザチオプリン(Azathioprine)
 核酸合成阻害作用をもつ免疫抑制剤。細胞の分裂増殖を抑制する働きをし、とくにT細胞に関与する免疫反応を抑える。

アルキル化剤(Alkylating agents)
 化合物中のSH、NH2、OHなど水素原子を含む基をアルキル基に置換する作用のある物質。この作用が遺伝子のDNA(デオキシリボ核酸)に働くと、DNAの複製の阻害や突然変異を起こし細胞死に至る。この細胞障害作用により、多くの物質が抗癌剤として利用されている。

アルブミン(Albumin)
 血液の液体成分である血漿に含まれる蛋白質の一種。血漿蛋白質の主要な成分であり、血漿の浸透圧を維持するほか、ホルモンや薬剤に結合して血液中を運搬する役割も果たしている。

意思表示カード、ドナーカード(Donor card)
 死後、臓器を提供する(しない)という意思表示をするための携帯用カード。

異種移植片(Xenografts / Xenotransplantation)
 種の異なる動物間で移植される臓器または組織。ヒトからヒトへの臓器移植(同種移植)では慢性的な臓器不足が問題となっているが、異種移植の進歩により、その一部は解決される可能性がある。

異所(Heterotopic site)
 本来あるべき所と異なるという意味。移植についていわれる場合は、本来の部位と異なるところに移植することをさす。例えば、移植腎臓を腎動脈でなく、腸骨動脈に結合する場合などを異所性移植と呼ぶ。⇔同所

移植コーディネーター(Coordinator)
 ドナーとレシピエントの仲介をする人。提供される臓器のレシピエントを決定したり、ドナーの家族に臓器移植について説明し同意を得る仕事等を行なう。

遺伝子座(Loci)
 染色体上で特定の遺伝子が占める位置。染色体地図上に表記される。

インターロイキン(Interleukin / IL)
 抗原刺激などによりリンパ球などから放出される細胞間伝達物質。IL-1、IL-2、IL-3などが発見されている。IL-1はマクロファージから放出されリンパ球を活性化する。IL-2、3などはT細胞から放出され、T細胞の増殖促進・活性化作用を示す。臓器移植における免疫抑制療法ではIL−2の制御が重要とされている。

インフォームド・コンセン ト、説明と同意(Informed consent)
 「説明と同意」というのは日本医師会の訳。「熟知納得」などの訳もあり、わが国ではまだ新しい概念。患者が医療担当者から適切かつ十分な説明を受け、その内容をよく理解したうえで、自分に必要と考えられる医療を選択すること。自分の健康に責任をもつ患者が、みずからの医療を選択するということを強調する意味で用いられる。

壊死(Necrosis)
 ある組織の多数の細胞が死滅し、その組織の機能が果たせなくなった状態。

炎症(Inflammation)
 組織が傷害されると局所に循環障害、滲出、変性などの病的変化が生じるが、この病変をもたらした刺激を除去し、病巣を修復しようとする生体の一連の反応を炎症という。

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カ行


肝硬変(Liver cirrhosis)
 肝臓が硬くなり、肥大もしくは萎縮した状態となる病気。慢性肝臓病の末期像で、ウイルス性肝炎、アルコール性肝障害、寄生虫病、慢性胆汁うっ滞などが進行したときに到達する病像。肝硬変になると5年以内に50%以上が死亡するといわれる。通常の方法では根治療法がなく、肝移植の対象となる例が多い。

キメラ(Chimaera / Cimera)
 遺伝子型の違う2種類以上の組織が同じ個体または同じ臓器内に存在する状態をいう。状態は移植、突然変異などによって起こりうる。モザイクともいう。

凝固因子(Coagulation factors)
 血液凝固を引き起こす特定の蛋白質群。

拒絶(Rejection)
 他の個体から移植された臓器(組織)を排除しようとするレシピ エント側の免疫学的反応。

クオリティー・オブ・ライフ/生活の質、生命の質(Quality of life:QOL)
 個人が、与えられた環境の中で可能な限り快適に生きることを指す。医療においては、延命を第一目的とする癌治療が患者の苦痛を増大させたり、病気を治療するための薬剤であってもその副作用により患者の生活に支障を与えるなど、医学的に望ましい治療が患者の生活の質をかえって低下させる場合がある。その様な局面でクオリティー・オブ・ライフが問題となる。

形質細胞、プラズマ細胞(Plasma cell)
 B細胞が分化した細胞で、抗体として機能する免疫グロブリンをつくる。

血液透析(Hemodialysis)
 腎不全では腎臓の動きが低下するため、体内に水分や過剰の老廃物がたまることになる。そこで腎臓の代わりに透析装置(人工腎臓)を用いて、血液を体外に導き透析して不要な物質や過剰な水分を除去し、浄化された血液を体内にもどす治療が行なわれる。ただし、この治療は1回数時間かかり、しかも毎週3回程度行なう必要があるため、患者の生活に対する制約が大きい。また透析装置は腎臓の持つ複雑な代謝機能を完全に再現できないので、長期に渡れば骨障害などの合併症が頻発する。

血管新生移植片(Neovascularised graft)
 1.移植臓器あるいはその一部について、本来、血管が生じるべきでないところに血管が新生すること。
 2.移植臓器の血行を回復させること。

血漿(Plasma)
 血球を除いた血液の液体成分。そのなかには種々の蛋白質成分が含まれる。血漿を血管外に出して放置すると、凝固物質が沈殿するが、その上澄みとなるのが臨床検査材料として用いられる血清である。

血漿交換(Plasmapheresis)
 フェレーシスとは供血者より採血してその成分を分離、一部を除去して残りを同じ供血者に返す処理をいう。血漿交換では採血した血液を血球と血漿に分離し、血漿を除き血球を返却する。通常は血球とともに凍結血漿やアルブミンを輸注する。この方法により、血漿中の病的因子を除外することができる。例えば、重症の高コレステロール血症では血液中のコレステロールを、自己免疫疾患では病的な免疫反応を起こす因子を、また臓器移植においても急性拒絶反応を起こす抗体を除去するなど、いろいろな領域で応用されている。血液成分の分離には遠心分離や透析膜による方法が用いられている。

血清学的検査(Serological tests)
 血清中の抗原や抗体を検出するための検査。

血栓症(Thrombosis)
 動脈または静脈中に異常な血液凝固塊ができ、血流が障害される病気。

ゲノム(Genome)
 個体を形成するために必要な全遺伝子セット。

胸膜滲出液、胸水(Pleural effusion)
 肺の外側を覆う胸膜の内側(胸膜腔)に分泌液がたまり、肺を圧迫してその機能を損なうこと。

抗原(Antigen)
 多くは外界から生体に侵入してきた異物であり、特異的な抗体の生成を誘発する。その大部分は蛋白質だが、糖、脂質などほかの物質が抗原となる場合もあ る。

抗原決定基(Epitope)
 抗原分子中の抗体によって認知され、結合される部分。

梗塞(Infarction)
 血液供給の途絶によって生じる臓器あるいは臓器の一部の死。

抗体(Antibody)
 抗原の刺激により生体内でつくられ、対応抗原とのみ特異的に反応する物質。 成分は血清蛋白質の免疫グロブリン。

抗代謝剤(Antimetabolite)
 生体の生理的機能をになう物質によく似た構造をもつが機能的には不活性な物質。このような類似物質が体内に入ると、これが天然の生理機能物質に代わって酵素などの作用を受けるため、生体の本来の代謝機能が阻害される。抗癌剤や免疫抑制剤として利用されている。

膠質浸透圧(Oncotic pressure)
 血漿は蛋白質を含むコロイド(膠質)溶液であり、その浸透圧は蛋白質の濃度に依存して変化する。透析膜を境にした2種類の溶液のコロイド浸透圧に差があると、浸透圧の高いほうから物質が浸透圧の低いほうに移動し、水が逆方向に移動して浸透圧較差を減少させようとする。たとえば、毛細血管における血液と組織液の間の水や物質の移動はこのメカニズムによる。

古典的感染(Classical infection)
 免疫能が正常な人に起こる感染。⇔日和見感染症


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サ行


サイクロフォスファマイド(Cyclophosphamide)
 アルキル化剤の一種。当初は抗癌剤として応用されたが、現在は臓器移植の際に免疫抑制剤としても使われている。

サイトカイン(Cytokines)
 抗原等により刺激を受けたマクロファージリンパ球などが放出する物質を総称してサイトカインと呼ぶ。マクロファージやT細胞などが抗原と接触したときに放出する蛋白質だが、抗体ではなく、他の細胞に信号を伝達する役割を果たす。

細胞毒性(Cytotoxicity)
 細胞を破壊あるいは細胞増殖を阻害する作用。

自家移植または自己移植(Autograft / Autologous)
 個体の臓器を取り出し、ふたたび同じ個体に移植すること。

糸球体腎炎(Glomerulonephritis)
 腎臓の糸球体に病変を生じる腎炎の一種。糸球体は毛細血管が集合した組織で、血液を濾過し、原尿をつくる働きを持つ。

シクロスポリン(Ciclosporin / Cyclosporin)
 1972年、スイスのサンド・ファーマ社によって真菌から抽出され、1978年より臨床応用された免疫抑制剤。多くの免疫抑制剤が細胞増殖を抑制することにより免疫系を無差別にブロックするのに対し、活性化されたヘルパーT細胞に選択的に作用するという特徴をもつ。1980年代、この薬剤の登場により移植臓器およびそのレシピエントの生存率が著明に改善したといわれる。

自己免疫疾患(Autoimmune disease)
 生体が自分自身に対して異常な免疫反応を示すために起こる病気。正常な免疫反応は、外界から侵入する異物を認識して排除するためのものだが、自己免疫疾患は、環境的、遺伝的な要因が関係すると考えられてはいるものの、原因は不明。

死の3徴候
 従来用いられてきた死の判定基準。心臓拍動停止、呼吸停止、および脳機能の不可逆的停止を示す瞳孔の対光反射の消失をもって3徴候死とする。

収縮性心膜炎(Pericarditis, constrictive)
 心臓を包む心膜に起こる炎症。原因はウイルス細菌の感染、膠原病、癌、心筋梗塞後症候群、外傷などのほか原因不明の特発性と呼ばれるものがある。病巣の変化により、化膿性、出血性、癒着性、収縮性などと分類される。ここでいう収縮性心膜炎は発症後に心臓が小さくなり心臓の運動が障害されるような経過を示すものをいう。

主要組織適合性複合体(Major Histocompatibility Complex:MHC)
 免疫応答、とくに移植の拒絶反応にかかわる抗原(蛋白質)や免疫応答をコードする遺伝子群。ヒトの場合は第6染色体上に存在し、HLAと呼ばれる。

食作用(Phagocytosis)
 細菌や異物を貪食(どんしょく:細胞内に取り込むこと)し、殺菌あるいは消化する働き。白血球のなかでも主に顆粒球やマクロファージがこの機能をもつ。免疫系のもつ多様な生体防御機能のひとつ。

植物状態(Vegetale)
 重症の頭部外傷などにより、高度の精神機能の回復がみられないまま安定した状態が3ヵ月以上続くこと。自律神経系の機能は正常で自発呼吸も可能。外界の刺激に対して目が動くなどの反応を示すが、意識があるという証拠が認められない。まれに意識を回復する例もある。行動したり、思考したりする機能を動物機能、胃腸の働きや血液循環調節などの不随意機能を植物機能と呼んだ古い習慣から、このように命名された。

心膜液貯留(Pericardial effusions)
 心臓は心膜と呼ばれる袋に包まれている。心臓と心膜の間は約50mlの漿液(しょうえき)で満たされ、心臓の運動による摩擦を減らしているが、心臓病や腎臓病などによる浮腫(ふしゅ)や循環障害から心膜液が異常に貯留することがある。異常に貯留した心膜液は心臓を圧迫し、その機能を阻害する。

推定同意の原則(Presumed consent policy)
 臓器移植のドナーとなりうる患者が発生したさいに、その患者が臓器移植を拒否する意思を示すカードを携帯しているか、最近親者が反対した場合を除き、移植のために臓器または組織を摘出してよいとする考え方。ベルギー、フランス、デンマーク、スウェーデン、オーストリア、スイスおよびイスラエルではこの原則が適用されている。

生体部分肝移植
 健康な人の肝臓の一部を切り取り、末期肝臓病患者に移植すること。肝臓は再生力が強く、ドナーに残された部分も移植された部分も正常の大きさに回復することが期待される。このため、1個しかない肝臓でも生きたドナーからの移植ができる。

全身性疾患(Systemic disease)
 脳・心臓・血管系、呼吸器系、消化器系などの全身的な病変や症状を起こす疾患。

先天性胆道閉鎖症(Congenital biliary atresia of bile duct:CBA)
 肝臓でつくられた胆汁を十二指腸に運ぶ胆管が、胎児期の成長課程における異常により閉鎖した状態をいう。胆汁が異常に溜まり、黄疸が全身に現れ便が白くなるなどの症状が出て、放置すれば肝硬変を起こし死亡へと至る。治療としては、筋すじ状となった胆管を切り取って、肝臓と小腸を直接つなぐ手術(葛西の手術)を行なうが、この手術で治癒しない場合には肝臓移植以外に救命の方法はない。

臓器仲介機関(Organ matching agencies)
 ドナー臓器・組織の適正分配とレシピエントの登録と追跡、臓器移植の結果の記録などを行なう国内または国際団体。

造血成長因子(Haemopoitic growth factors)
 骨髄の造血細胞に刺激を与え白血球(顆粒球)や単球・マクロファージをつくる働きをする、インターロイキン3(IL−3)、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)などのこと。
※白血球(顆粒球)や単球・マクロファージは、骨髄の造血細胞がインターロイキン3(IL−3)、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)などの 刺激を受けて分化してつくられる。
 顆粒球、単球・マクロファージ系は食作用により初期の感 染防御をになう細胞群であり、免疫系で重要な役割を果たしている。IL−3、GM−CSF などの造血成長因子は、造血細胞の分化をうながすことにより、顆粒球、単球・マクロファージ系の増加をもたらし、免疫系を賦活する。一部は顆粒球減少症などの治療薬としても用いられている。

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タ行

対立遺伝子
(Allele)
 ひとつひとつの蛋白質や機能の遺伝情報を担うのが遺伝子であるが、その同じ遺伝子に違いがあり、つくられる物質やその機能に違いが生じるものを対立遺伝子という。通常は2つの対立遺伝子が染色体マップの同じ部位(同一座)に存在するが、ABO血液型のA、B、Oのように3つ以上の対立遺伝子が認められる場合もある。

竹内基準
 1985年(昭和60年)12月、竹内一夫・杏林大学脳神経外科教授を座長とする厚生省研究班が発表した脳死判定基準。

タクロリムス(Tacrolims)
 筑波の土壌より抽出された免疫抑制剤。通称の「FK506」は開発番号名。

蛋白尿(Proteinuria)
 尿中に一定量以上の蛋白が排泄されること。健康人でも微量の蛋白は排泄されるが、24時間で150〜200mgを超えると異常と考えられる。尿中蛋白排泄量は腎機能障害に比例して増加するので、腎疾患の経過を判定するさいの重要な指標となる。

聴覚性脳幹誘発電位(Auditory brainstem evoked potential:ABEP)
 脳の最中心部にあり、人間の基本的生命維持機能をになっている脳幹の機能の有無を調べる検査。耳から周期的に音を聴かせ、それにより脳幹で誘発される電気信号を記録する。脳死判定のための検査として用いられることもある。

超急性拒絶反応(Hyperacute rejection)
 移植後数分から数時間以内に起こる拒絶反応。同種移植ではみられないが、異種移植で高頻度に発生する。

適合異種移植片(Concordant xenograft)
 系統発生学的に近縁の異種動物間で行なわれる移植。たとえばチンパンジーとヒトの間で行なわれる移植がこれにあたる。 ⇔不適合異種移植片

同意確認の原則(Required consent policy)
 移植臓器の提供に際し、本人の最近親者の同意を必須とする考えかた。

同系移植片(Isograft)
 遺伝的および免疫学的に同一の個体間の移植。ヒトでは一卵性双生児間の移植がこれにあたる。

同種移植片(Allograft)
 同じ種の動物で遺伝的に異なる個体間での臓器あるいは組織の移植。

同所(Orthotopic site)
 本来の部位。移植では臓器がそれ本来の部位に移植されること。たとえば、腎臓を腎血管に結合する移植。⇔異所

ドナー(Donor)
 移植においては移植臓器の提供者を意味する。

ドミノ移植(Domino effect)
 ひとつの個体から別の個体に複数の臓器(例えば心臓と肺)を移植し、そのかわりに移植された個体から、ただちに健康なほうの臓器(例えば心臓)を切り離して、第3の患者に移植すること。

トランスジェニック(Transgenic)
 ある種の生物の特定の遺伝子を他種生物に導入して異種生物間で遺伝子の発現を制御する試み。たとえば、ヒトの血圧上昇因子であるアンジオテンシノーゲンをラットやマウスに導入し、これらの動物で高血圧を再現するといった実験、あるいは不適合異種移植において、急性拒絶反応を起こす因子に修正を加えるような遺伝子をドナー動物(たとえばブタ)に導入する実験などが行なわれている。通常は、目的とする遺伝子を動物の受精卵に人工的に導入し、その子孫を数世代飼育して目的とする機能を発現した個体を得る。

トランスフェクション(Transfection)
 ウイルス粒子は、中心の遺伝子(DNAまたは RNA)とそれを包む蛋白質の殻で形成されているが、自然界ではウイルスが細菌の細胞にみずからのDNAだけを移行されるかたちの感染が起こり、これをトランスフェクションという。また、これと同じプロセスを人工的に模倣する遺伝子操作技術も開発されており、これもトランスフェクションと呼ばれる。後者は培養した真核細胞(細菌など)に裸のDNAを接触させ細胞に取り込ませるというもの。特定の遺伝子DNAを標的細胞にとりこませ、目的とする蛋白質や機能を発現させたり、その種の細胞だけを分離培養して同じ遺伝子セットを持つもの(クローン)だけを作製したりする。

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ナ行

脳死(Brain death)
 脳幹を含む脳全体の機能が停止し、回復の希望が全くなくなった状態。脳死では呼吸がないため、そのままでは酸素欠乏によりやがて心停止に至る。ベンチレーターを装着し、ホルモン療法などを行えば、ある程度の期間心臓の機能を保つことが可能となるが、回復することはない。この状態を個体の死と考えるかどうかで論争が続けられている。

脳死臨調
 正式名称は「臨時脳死及び臓器移植調査会」。1989年(平成元年)12月に国会で設置が定められた総理大臣の諮問機関。1990年(平成2年)2月から2年間にわたり、各界代表者からなる15人の委員と5人の参与が脳死・臓器移植問題について検討し、答申を作成した。

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ハ行

敗血症
(Septicaemia)
 血液の感染。血流中に細菌その他の微生物が存在し、全身性の感染症を生じているか、それを生じうる状態。致死率の高い非常に危険な状態。

白血球(Leucocytes)
 感染防御能をもつ血球群。異物を取り込んで処理する顆粒球、単球、免疫応答の主役であるリンパ球からなる。

ヒト白血球抗原系(Human Leukocyte Antigens [HLA] system)
 ヒトの組織適合性を決 定する白血球上に出現する複数の抗原。この抗原の組み合わせによって、個体の組織適合型が決まる。この型は免疫系による異物の認識を決定するとともに、移植の適合性も決められるので、HLA型の相違が大きいほど拒絶反応が起こりやすくなる。

日和見感染症(Opportunistic infections)
 健康な人には症状を起こさず、免疫能の低下した人にだけ発症する感染症。最近、院内感染症として話題となっているMRSAもそのひとつで、病原菌の黄色ブドウ球菌はありふれた菌で保菌者も多いが、他の疾患や手術後などで免疫能が低下している人に感染すると病気を起こす。⇔古典的感染

副腎皮質ステロイド、コルチコステロイド(Corticosteroids)
 副腎皮質でつくられるステロイドホルモンの総称。それ自体は細胞や酵素の反応を起こさないが、多くの生化学的反応を調節することにより生体の恒常性維持に大きな役割をはたしている。アレルギー反応、炎症および免疫反応に対する抑制作用があり、薬剤としても広く用いられている。

浮腫(Edema / Oedema)
 組織に水がたまって起こる、いわゆる水脹れの症状。様々な原因によって起こりうる。心不全、腎不全等が代表的な浮腫。

不適合異種移植片(Discordant xenograft)
 系統発生学的に離れた異種動物間の移植。例えばブタ・ヒト間における移植など。 ⇔適合異種移植片

ベンチレーター、人工呼吸器(Ventirator)
 自発呼吸機能を失った患者に装着し、人工的に呼吸を維持する装置。respirator(レスピレーター)ともいう。

乏尿(Oliguria)
 1日の尿量が400ml以下と極端に減少した状態。急性腎不全によるものが代表的。

補体(Complement、略号=C)
 動物の血清中の約20種類の蛋白で構成される物質。遺伝的な欠損症の研究にもとづき補体第1成分(C1)から第9成分(C9)まで分類されている。補体系が 抗体や細菌成分によって刺激されると連鎖反応を起こし、食細胞の機能の増強、抗原・抗体の結合の強化、リンパ球からの活性物質放出の促進、あるいは細菌の溶解など多彩な働きをする。最近の研究から、異種間移植で起こる超急性拒絶反応でも補体系が重要な役割をはたしているといわれる。

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マ行

マクロファージ(Macrophage)
貪食能をもつ巨大な白血球。細菌などの微生物や炎症によって生じた組織の遺残物などを取り込んで処理する。

免疫応答遺伝子(Immune response genes)
 組織適合性を決定するHLA抗原の発現を制御する遺伝子。HLA抗原系は血清学的に多種類の抗原に分類されるが、その中でHLA-DR、HLA-DQ、HLA-DPはクラスII抗原と呼ばれ、リンパ球マクロファージなどに表現されることがわかっている。これらが免疫応答と組織適合性を決定するうえで重要なことから、それらをコードする遺伝子をクラスIIMHC(主要組織適合性複合体)と呼ぶ。

免疫グロブリン、ガンマグロブリン(Gamma globulin)
 血漿蛋白の一種。抗体を形成し、生体を感染から防御する役割を担うほか、血液中でホルモンや薬剤に結合し、それらを運搬する働きもする。

免疫グロブリン、ガンマグロブリン(Immunoglobulins / Ig)
 抗体の機能をもつ構造 的によく似た一群の糖蛋白質の総称。形質細胞およびリンパ球によって合成される。構造的および抗原性の違いからIgA、IgG、IgD、IgE、IgMの5クラスに分類される。

免疫グロブリンA、ガンマAグロブリン(IgA)
 抗体を形成する免疫グロブリンの一種。気道や消化管から分泌され、感染を防御する。

免疫グロブリンG、ガンマGグロブリン(IgG)
 抗体を形成する免疫グロブリンの一種。感染の後期に形成される。

免疫グロブリンM、ガンマMグロブリン(IgM)
 抗体を形成する免疫グロブリンの一種。感染の初期に形成され、免疫反応に関与するが、後期になるとIgAやIgGにとって代わられる。

免疫原性(Immunogenicity)
 生体の免疫系を刺激して抗体産生を誘発する性質。

免疫細胞(Immunocyte)
 免疫能力のあるすべての細胞。

免疫調節(Immunomodulation)
 生体の免疫系の一部を選択的に抑制したり刺激すること。

免疫不全(Immunodeficiency)
 なんらかの原因により免疫系が十分に働かなくなった状態をいう。原因は多様であり、ある種の免疫細胞やその機能が先天的に欠落して起こる先天性免疫不全症、ウイルスがT細胞を破壊するために起こるHIV感染症などの後天性免疫不全症候群、抗癌剤や免疫抑制剤の副作用としておこる感染防御能の低下などがある。また高齢や栄養不良に伴う免疫能の低下から免疫不全をきたす場合もある。

免疫抑制剤(Immunosuppressive drugs / Immunosuppressants)
 免疫反応の制御で中心的な役割をはたす細胞である、活性化されたT細胞の機能を抑制する薬剤。

モノクロナル抗体、単クローン性抗体(Monoclonal antibodies)
 目的の抗原の単一の抗原決定基(抗体が認識する蛋白質の部分構造)にだけ反応する高度に純化された抗体。通常、生体に異物として入った抗原は多数の抗原決定基をもち、つくられる抗体も複数の抗原認識部位を持つ(ポリクロナル抗体)。このため、ポリクロナル抗体は複数の抗原認識部位のひとつでも備えた抗原であれば結合するが、モノクロナル抗体は単一の認識部位だけに結合するので、これを用いると標的とする抗原に正確に結合させることができ、また結合の効率も高い。モノクロナル抗体は、それをコードする遺伝子を均一にもつ細胞を培養してつくらせることができる。標的指向性が高いモノクロナル抗体を用いることにより、いろいろな病原微生物の違いをより詳細に知ることができるほか、移植の拒絶反応にかかわる細胞の反応部位を選択的にブロックしたり、癌細胞にしかない抗原認識部位に反応する抗体を抗癌剤と結合させて体内に送り込んで効果を高めるといった治療的応用も可能である。

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ヤ行

ユノス、全米臓器分配ネットワーク
(United Network for Organ Sharing:UNOS)
 米国における公平な臓器分配を行なうための組織。1984年に創設、その2年後から政府の支援を受けて活動している。臓器移植希望者を登録するとともに、ドナーが発生したさいのレシピエントの決定を厳格な医学的基準に基づいて行なう。

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ラ行

リンパ球(Lymphocytes)
 免疫応答で主要な役割を果たす白血球の一種。抗体をつくるB細胞、細胞性免疫の機能をもつT細胞に大別され、T細胞はさらにヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、細胞障害性T細胞などに分類される。また、B・T細胞のいずれにも属さないキラー細胞、ナチュラルキラー細胞の存在も知られている。

リンフォカイン(Lymphokines)
 抗原などにより刺激を受けたリンパ球が放出する物質。リンフォカインは他のリンパ球、単球、マクロファージなどを刺激し、細胞性免疫の反応を促進する。

レシピエント(Recipient)
 臓器受容者。

レスピレーター、人工呼吸器(respirator)
 =ベンチレーター

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ワ行

和田心臓移植事件

 1968年(昭和43年)8月、札幌医大胸部外科の和田寿郎教授によって行なわれた日本初の心臓移植は、当初こそ輝くべき医療の先鞭として大いにもてはやされたが、移植後83日目にレシピエントが死亡した後は、様々な問題が指摘され殺人罪で告訴されるにまでに至った。最終的に札幌地検は証拠不十分で不起訴処分としたが、脳死判定と移植手術を同じ医師が行なったこと、レシピエントの治療が心臓移植以外の方法で救命できなかったのかなど、多くの疑問が提起され、その後の日本の移植医療に大きな影響を及ぼした。



ABC順

B細胞(B-cells)
 T細胞の刺激を受けて形質細胞に分化し、抗原刺激に応じて抗体として機能する免疫グロブリンをつくる。Bリンパ球という名称は鳥のファブリキウス嚢(Bursa of Fabricius)で処理される細胞として発見されたことによる。

Bリンパ球(B-lymphocytes)
 =B細胞

FK506
 =タクロリムス

MHC誘導性調節(MHC-directed modulation)
 T細胞が抗原を認識するのは、MHC分子に結合した小さなペプチドが抗原に結合することによる。したがって、このペプチドに形のよく似た物質(ペプチド)を反応の場に加えると、抗原とT細胞上のペプチドの結合を競合的に抑制することができる。このような方法でT細胞による免疫応答の誘発を調節あるいは阻害する試みをMHC誘導性調節という。

T細胞(T-cells)
 末梢血リンパ球の60〜70%を占め、細胞性免疫を担当する主要な細胞群。抗原刺激に応じてリンフォカインと呼ばれる伝達物質を放出して他の免疫細胞を刺激するものや、それ自体が細胞障害作用を示すものがある。ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞、細胞障害性T細胞などに分類される。Tリンパ球。

Tリンパ球(T-lymphocytes)
=T細胞


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