声  明

平成8年9月27日
日本移植者協議会
会長 大久保 通方


 平成4年2月、脳死臨調において少数の反対意見が付記されたものの、「脳死は人の死」であるとの答申が出され、脳死者からの臓器提供の道が開けた。
秩序ある移植医療を行うためには「移植法」が必要との見解から、平成6年4月「臓器の移植に関する法律案」(以下「臓器移植法案」と記す)が国会に上程された。これを受け、厚生省及び日本移植学会は日本国内脳死者から臓器提供を受けての移植は法案成立までは行わないとの見解にたち、私ども日本移植者協議会としても不満ではあったが一応了解し、推移を見守ってきた。
 議員立法ということもあり、政府提案議案が優先され、本会議での提案趣旨説明、厚生委員会において趣旨説明と参考人からの意見聴取が行われたが、委員会においてこの法案がきちんと論議がなされたことはない。
 国民の声を聞くとのことで「地方公聴会」が三度開かれたがその後の委員会において、公聴会について一度も報告はなされていない。
 委員会において「臓器移植法案」に関する質疑はほとんど行われず、実質的な論議がないまま前例のない継続審議の連続ということを繰返して、棚上げ状態にし放置し続け、突然修正案が提出されるなど理解に苦しむものであった。 しかも、その内容たるや「移植禁止法」というべきものであったが、この修正案ですらも一度の審議されることなく、会期切れをもって廃案となった。
 日本移植者協議会では他の移植関連患者団体と共に度重なる請願や陳情を「厚生委員長」「厚生委員」を中心に全ての衆議院議員に対して行ってきた。内容は「今回上程されている臓器移植法案を、国会の場において国民の前に明らかにし、議論を行い成立させてほしい」とのものであった。
 脳死臨調の答申後の4年間に、いのちをながらえる唯一の希望である移植医療を受けるチャンスすら与えられず、約6000名とも7000名ともいわれる患者が亡くなっていった。今日も一日4、5人の方が無念のうちに亡くなっている。
 「臓器移植法案」を2年半も放置し、その間に多くの患者が苦しみ、あるものは他に手だてがなく海外に移植の機会を託したが、多くのものは失意のうちに亡くなっていった。このことを思うと強い怒りと憤りを覚える。この責任はひとえに国会議員の無責任な職務不履行にある。
 本日、衆議院の解散にあたり「臓器移植法案」が廃案となったことに強く抗議し、その責任を追及したいと考える。  また、4年半もの時間を費やし同法案の成否を出すことなく廃案となった事実から今後もこの種の法案が上程されたとしても同じ結果となることは必定である。
 このことは、「人の死を定義する」意味を持つ法案を国会が結論を下すことが不可能であることを証明している。したがって法律のできるのを待つことは意味をなさない。脳死臨調答申にも、脳死の人から臓器提供を受け、移植手術を行うことは、必ずしも法律を必要としないと明記されており、日本移植学会においては多くの患者が苦しみ一日も早い臓器移植を待ち望んでいる現状を鑑み、速やかにかつ公正に全臓器の移植医療の再開を行うべきである。
   ただし、「密室の医療」との批判を受けないよう、個人のプライバシーを侵さない範囲において情報を公開するとともに、臓器の提供者、臓器の移植を必要としている患者、臓器移植者、これらの人達とその家族の人権を尊重することを第一と考え、人権の保護と移植医療の公正性を担保するためにも、第三者による審査、監督機関の設置を望むものである。同時に日本救急医学会、厚生省、公安当局など関係機関も、速やかに適切な対応をとるべく協力を要請するものである。