2. 腎不全とは

■慢性腎不全

 腎臓の慢性の病気のために腎臓の機能が低下し、機能が正常時の30%以下程度に落ちた状態を慢性腎不全といいます。腎臓が尿をつくって老廃物、水分、電解質などを排泄することで、体の中の恒常性が保たれていますから、この機能がうまく働かなくなると、さまざまな症状が起きてきます。また、腎臓でのホルモン分泌、ビタミンDの活性化も阻害されます。  慢性腎不全は何年もかかって腎臓の機能が低下して行くので、腎臓が障害される程度によって症状の出方、治療法も異なります。

腎不全の進行
第1期
  腎機能の低下(予備能の低下)
  腎機能(濾過能力)が70〜50%に低下。
  腎臓の予備能力で働きは維持され、特に症状は出ない。
第2期
  腎機能の障害
  腎機能は50〜30%に低下。
  血清クレアチニン値が正常の範囲を超えて2mg/dL以上になる。
  人によって症状が出てくる。
第3期
  腎不全
  腎臓の機能が30%〜10%に低下した段階。
  血清クレアチニン値は3mg/dL以上になる。
  腎不全の症状が出る。
  薬での治療、食事療法を行う。
第4期
  末期腎不全
  腎臓機能が10%以下に低下した段階。
  血清クレアチニン値は8mg/dL以上。
  この段階では尿がほとんど出なくなるので尿毒症が起き、各種の重大な症状を起こして命に関わる。
  透析か腎臓移植が必要になる。

■腎不全に至る過程(腎不全の仕組み)

■腎不全の症状

腎機能が低下するにしたがって、以下のような多様な症状が出てきます。個人差が大きく、人によって出方が異なります。

検査で分かる尿の異常
・たんぱく尿:腎臓の濾過機能が低下するため、通常より多いたんぱく質が尿の中にもれる。
・血尿:腎臓の濾過機能が低下するため、通常なら尿中に入らない赤血球が尿にまじる。

尿の量
 腎機能が低下して行くと尿の量は多くなり、特に夜間の尿の量が増える。腎不全がさらに進行すると尿をつくることができなくなり、尿の量は減る。

排泄機能
・本来なら尿の中に排泄される尿毒素(老廃物)が体内に蓄積され、尿毒症状があらわれる。初期の段階では疲労感などの症状が現れる。尿毒素の蓄積が進むと食欲不振、吐き気などの消化器症状、頭痛、注意力散漫などの神経系の症状が出る。さらに進行するとけいれんや意識障害を起こす。
・尿の量が減ると、塩分、水分を排泄する能力が落ちる。体の中に水分がたまってむくむ。特に足、顔がむくみやすい。また血圧の上昇が起こる。
・酸の排泄能力が低下して、体の酸・アルカリのバランスを調整できなくり、血液が酸性に傾く(アシドーシス)。
・電解質(ナトリウム、カリウム、カルシウムなど)のバランスが異常になる。特にカリウムを排泄する能力が低下し、血中のカリウムの濃度が高くなる。異常に高くなると高カリウム血症を起こし、ひどい場合は不整脈を起こす。

内分泌
・エリスロポエチン(造血ホルモン)の分泌が減少し、赤血球が減少するため、貧血になる。
・血圧を調整するホルモンの分泌が低下し、血圧が上がる。
・ビタミンDの活性化が阻害され、腸からのカルシウムの吸収が妨げられるので血中カルシウム濃度が低下する。その結果、骨からカルシウムが放出されるので、骨がもろくなる。
※腎臓病で高血圧になると、それがさらに腎臓の障害を悪化させるという悪循環におちいる。

■慢性腎不全を起こす病気(グラフ)

 慢性腎不全から透析に至る原因となる病気は、現在では糖尿病性腎症がもっとも多く38%、ついで慢性糸球体腎炎が32%を占めています。2001年に透析を導入した約32,000人のうち、糖尿病性腎症の人が約12,000人、慢性腎炎の人が約10,000人でした。糖尿病性腎症から透析に至る人は近年増え続けており、最近10年間で2倍近くに増加しています。糖尿病人口の増加とともに大きな問題となっています。

・代表的な病気

糖尿病性腎症
 糖尿病を発病してから血糖値が適切にコントロールされず、高血糖の状態が5〜10年以上続くと、腎臓の糸球体の毛細血管が硬化し、濾過機能が低下します。神経障害、網膜症とともに、糖尿病の三大合併症のひとつといわれます。

慢性腎炎(慢性糸球体腎炎)
 糸球体が障害を受け、腎機能の低下が徐々に進行する病気の総称。発症には免疫反応が関わっているとみられます。いくつかのタイプがありますが、IgA 腎症がもっとも多く、他に膜性腎症、巣状糸球体硬化症、膜性増殖性糸球体腎炎などがあります。

腎硬化症
 高血圧のため腎臓の細動脈の動脈硬化が起こり、血液の流れが悪くなり、濾過機能が低下します。

※ネフローゼ症候群
 糸球体から尿に多量のたんぱくが排泄されるため、血液中のたんぱくが減少し、むくみを起こす症状。糖尿病性腎症、慢性糸球体腎炎で起こる。

■腎臓病の検査

慢性の腎臓病の多くは、かなり進行するまで特に自覚症状がないので、本人が気づかないうちに悪化します。症状が出ないうちは健康診断の尿検査、血液検査で発見されることが多いので、きちんと健康診断を受けることが大切です。また病気の治療中にも、進行の程度などを調べるため、各種の検査を行います。代表的なものについて説明します。

たんぱく尿
 尿にたんぱくが通常以上に漏れているかどうかを調べるもので、たんぱく質のうちのアルブミンについて検査する。健康診断では試験紙でスクリーニングを行う。その結果、(1+)以上の場合、1日の尿を集めてたんぱくの量を検査する。尿たんぱくが1日1g以上は異常。

血尿
 通常、赤血球は尿の中に漏れないが、糸球体が障害されると尿に赤血球がまじる。わずかな場合は肉眼では分からない。一般の健康診断では試験紙を使ってスクリーニングを行い(潜血反応)、必要な場合は尿の沈殿物を顕微鏡で観察して赤血球の有無を調べる。

血清クレアチニン値(正常値:0.5〜1.2mg/dL)
 腎機能低下の指標として一般に使われる。クレアチニンは筋肉から血液中に出て腎臓から尿に排泄される。腎臓の機能が低下すると、血中のクレアチニンの濃度が高くなる。ただし、筋肉量が多い人ではもともと濃度が高く、筋肉の少ない人は低くなる。

血清尿素窒素(正常値:5〜20mg/dL)
 たんぱく質の代謝でできる老廃物で、血中から尿に排泄されるが、腎機能が低下すると排泄されず、血中の濃度が高くなる。ただし、食事の内容に影響されることがある。

クレアチニン・クリアランス(腎機能検査)
 腎機能を評価するための重要な指標となる検査。血液中のクレアチニンと尿中のクレアチニンの濃度を測り、腎臓がクレアチニンを含む血液を1分間にどれくらい濾過できるかを計算する。正常なら、1分間に約100ミリリットルの血液を処理できる(100mL/min)。一定時間内に出る尿をすべてためておき、その一部を検査するという方法で行う。

腎生検
 腎臓の組織のわずかな部分を採取し、顕微鏡で糸球体や尿細管の状態を観察する。腎臓の病変の程度を正確に知ることができる。局所麻酔をかけ、医師が超音波の画像を見ながら針を腎臓に刺し、組織の一部を取り出す。数日間の入院が必要。


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