3-1. 血縁でなくても腎臓を提供できるのですか
現在は免疫抑制剤がよくなっているので、非血縁の家族ドナー(夫婦間など)でもHLAのマッチングにかかわらず成績は良好です。たとえば、非血縁夫婦間腎移植は親子間腎移植と較べても遜色のない移植腎生着率が得られています(平均移植腎生着数は14.5年)。
ただし倫理的な観点から、原則として親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)以外の非血縁者間での生体腎移植は行われません。親族以外の第三者がドナーとなる場合は、提供意思が強制でないこと、金銭の授受などが行われないことなどを厳正に審査するよう、日本移植学会の倫理指針によって定められています。

3-2. 高齢や幼少でも腎臓を提供できますか
日本移植学会は倫理指針の改訂を行い、これまで「未成年者は対象としない」としていましたが、未成年者も16歳以上については対象に含めました。しかし、本人の自発的な意思であり、強制されたものではないことが十分に担保されなければならないことは言うまでもありません。
一方、年齢の上限は定められていません。しかし、元気な合併症のない高齢者(70歳以上)でも、加齢による腎機能の低下は認められ、高齢者からの提供移植腎の長期生着は不良であることが報告されています。70歳以上の腎提供は、本人、レシピエントの両者ともに避けた方がよいと考えています。

3-3. 血液型が違っても、腎臓を提供できますか
できます。「A→O、B→O、AB→O、AB→A、AB→B、A→B、B→A」の場合、「血液型不適合」といいます。血液型不適合の場合、ドナー腎の血管にドナー血液型抗原が存在していて、これをレシピエント血中に存在する抗血液型抗体が攻撃し、急性拒絶反応を起こしてしまいます。そのためレシピエント側で、まず脾蔵摘出とDFPP(二重濾過血漿分離交換)を行い、抗血液型抗体を低下させた後に移植します。レシピエントは移植直後に通常より強力な免疫抑制剤を必要としますが、免疫抑制剤がよくなった現在では、平均生着年数は親子間の12.3年とほとんど変わりません。O→B、O→A、O→AB、A→AB、B→ABは「血液型不一致」といいますが、レシピエントに軽い貧血がくる以外は、DFPPも必要とせず、免疫抑制剤も通常で可能です。

3-4. 病気や障害があっても、腎臓を提供できますか
日本移植学会の倫理指針には、「健常である提供者(ドナー)に侵襲を及ぼすような医療行為は本来望ましくないと考える。とくに、臓器の摘出によって、生命の機能に著しい影響を与える危険性の高い場合には、これを避けるべきである。例外としてやむを得ず行う場合には、国際社会の通念となっているWHO(世界保健機関)の勧告を基礎にする」と述べられています。当然ドナーの方には、片腎となっても腎機能の悪化なく今までと同じ生活ができることが求められます。正常な腎機能(クレアチニンクリアランス70mL/min以上)と尿所見であり、また、糖尿病、悪性疾患、活動性がある感染症、膠原病、精神疾患がないこと。また、免疫学的条件として、レシピエントがドナーリンパ球に対して抗体をもっていないことが必須条件です。

3-5. 臓器提供して腎臓が1つになると、どんな合併症が起きますか
基本的には何も起こりませんが、脱水になると腎機能が悪化しやすいため、風邪をひいたときや暑くて汗をたくさんかいたときなどは、十分に水分を取るなどの対策を講じることが必要です。また尿路感染に対しても腎機能が悪化しやすいため、症状があれば早めの外来受診が望まれます。長期的には、いわゆる生活習慣病の管理をきちんとすることが重要です。肥満、高血圧、糖尿病、高脂血症は腎機能に影響を及ぼします。片腎で機能が悪化すれば慢性腎不全から透析に移行する可能性もあるため、食事、運動に気をつけて生活習慣病にならないよう心がけることが大事です。

3-6. 腎臓を提供するために検査をする必要がありますか
あります。感染症検査として、B型肝炎、C型肝炎、梅毒、抗HIV抗体、抗HTLV-1抗体、ツベルクリン反応、サイトメガロウイルスを中心にウイルスの抗体価をチェックします。HBsAg、HCVAg、HIVAb陽性者はドナーとして不適切です。
血液検査として、血液一般、一般生化学、検尿、血清学的検査、腫瘍マーカー。
組織適合検査として、HLAタイピング、リンパ球クロスマッチ。
内分泌検査として、空腹時血糖、HbA1c、75gOGTT。
生理検査として、安静心電図、負荷心電図、心エコー、呼吸機能。
画像診断として、胸部、腹部X線写真、胸部、腹部、骨盤CT、腹部超音波、DIP、腎動脈造影、腹部造影MRI。
消化管検査として、胃カメラ、便潜血、便ヒトヘモグロビン。
以上をチェックします。
あとは、女性の方は婦人科受診、レシピエントといっしょに精神診療科受診が必要です。

3-7. 腎臓を提供するための検査や腎臓摘出の費用はどれくらいかかりますか
ドナーの検査入院と手術代は、レシピエントの保険で支払われます。そのためドナーの方の負担はまったくありません。

3-8. 献腎移植はどんな人が腎臓を提供するのですか
献腎移植のドナー(提供者)は、術前検査を十分に行うことができないため、年齢と原疾患、摘出時の状態で適応を決めなくてはいけません。年齢70歳以下がよく、尿所見は末期の上昇を除き正常であることが望ましく、血液生化学、尿所見等による器質的腎疾患の存在が疑われるとき、HCV抗体陽性のときは慎重に適応を決定します。死因が悪性腫瘍の人はもちろん適応外であり、既往歴に悪性腫瘍がないかにも注意が必要です。ただし、原発性脳腫瘍はドナー候補となりえます。全身感染症、活動性感染症、HBs抗原、HTLV−1抗体、HIV抗体陽性の人、クロイツフェルト・ヤコブ病およびその疑いの人も除外されます。

3-9. 血液型が違っても、腎臓を提供できますか
ABO不適合は献腎移植では行いません。ただし、Rh型は免疫反応への関与が少ないため一致させる必要はありません。また、組織適合性検査にてリンパ球クロスマッチ陽性の人(レシピエント血清中に、ドナーリンパ球に対する抗体が存在する場合)も、適応外となります。

3-10. 臓器提供後の遺体はどうなるのですか
腎臓を摘出させていただいた後は、腹部を縫合して、すみやかに家族のもとへ帰っていただきます。

3-11. ドナーカードはどうやって書くのですか
当てはまる番号に「○」をつけ、臓器に「○」をつけます。署名期日を記載し、自筆で署名します。家族署名がなくても有効です(日本臓器移植ネットワークホームページ・意思表示カード記入方法)。

3-12. ドナーカードを持っていても提供できないときがあるのですか
あります。臓器提供は、1997年10月に施行された臓器移植法に基づいておこなわれます。脳死下では、心臓、肝臓、肺、腎臓、膵臓、小腸の摘出が可能ですが、その際は、ドナーカードによる本人の生前の意思表示に加えて、家族の承諾が必要です。そのため、本人の希望が確認されても、家族が拒否すれば提供はできません。心停止後は、腎臓、膵臓、角膜の提供が可能ですが、このときは書面での意思表示は必要ありません。家族の承諾のみで提供できます。ただし心停止前に承諾がないと、移植には間に合いません。また、医学的適応(年齢、原疾患、脳死など)や社会的適応で提供できないときもあります。

3-13. 腎臓提供者は教えてもらえるのですか
お教えすることはできません。提供された腎臓が拒絶をくり返したり、予想より早く機能廃絶になったときに、トラブルになりかねないためです。

3-14. 腎臓提供者の家族は移植者を教えてもらえるのですか
お教えすることはできません。提供した家族と移植者との間に、金銭トラブルなどが起こる可能性があるためです。

3-15. 生体腎移植の腎臓提供者はどのような手術を受けるのですか
腎臓は左右1個ずつ、計2個存在します。そのうちの1個(通常は左側)を摘出し、レシピエントに提供する手術です。通常、国内で現在行われている3種類の術式を以下に説明します。最近は、内視鏡的に腎臓を摘出する方法が一般的になりつつあります。

1.腎摘出術の術前から術後までの流れ
手術前夜は、緊張をほぐし十分に睡眠がとれるように、精神安定剤を処方します。手術当日の朝は、腎摘出側の前腕に静脈を確保し点滴を開始します。これは十分に水分を補給し、腎臓にとってよい環境を保つためです。
麻酔は、吸入麻酔薬による全身麻酔と、術後の創部痛をとるための硬膜外麻酔(脊髄の硬膜外腔に麻酔薬を注入する細いチューブを留置、術後創部だけ局所的に麻痺させ疼痛を取り除く)を併用します。

2.腹部斜切開による腹膜外腎摘出術
腎臓は、後腹膜腔にあります。そこで、手術の切り口(切開創)は脇腹を斜めに25cmほど切るようになります。具体的に場所を示しますと、裏は脇の下から降ろした線と交わる位置から12番目の肋骨の下縁に沿って、斜めに下腹部まで皮膚を切開します(側腹部斜切開)。筋膜と筋肉を同じように切開し、後腹膜の脂肪組織に包まれた腎臓(10×5×3cm、150gぐらいの大きさです)を、周囲からていねいに剥離し、十分な長さの腎動脈、腎静脈そして尿管をつけて摘出します。摘出した後は、術後の出血がないように血管は二重に結紮(絹糸で縛ること)します。腎臓を摘出した後は、手術創の出血が止まっていることを十分に確認し、創を洗浄します。液の貯留を防ぐためにドレーン(排液管)を腎臓の摘出したあとに入れておきます。これは、手術後の出血や体液が術野に溜まり、化膿の原因となることがあるからです。手術創は、筋膜・筋肉、皮下組織と皮膚をそれぞれ層々縫合して閉じます。手術の所要時間は3時間程度です。

3.傍腹直筋切開による腹膜外腎摘出術
前述の手術と異なる点は、仰臥位で正中(みぞおちから臍を通る体の中央の線)から数cm外側(腹直筋の外側縁)を肋骨下縁から下方への縦切開(約10cm)で皮膚を切開し、腹直筋の外縁に沿って筋膜を切開します。基本的には、腹部斜切開による手術と摘出法は変わらず、腎臓への到達法が異なります。ただ、腹部斜切開による手術と比べ筋肉の切断がなく術創も小さいのですが、皮膚切開部から腎臓が奥にあるため、1〜2時間余分に時間がかかります。しかし、腹部斜切開による手術と比べ術後の疼痛は少なく、患者さんへの負担が少ないことが利点です。手術所要時間は4〜5時間です。

4.鏡視下腎臓摘出術
最近、欧米で広く行われるようになった術式です。日本国内で施行しているのはまだ一部の施設のみですが、今後はこの手術が主流になっていくと考えられています。摘出創が小さいため術後の疼痛がより少なく、早期の離床が期待できます。腹腔内を通り腸を避けて摘出する「腹腔鏡下腎臓摘出術」と、直接後腹膜腔にいたって腎臓を摘出する「後腹膜鏡下腎臓摘出術」があります。われわれが、普段施行している後腹膜鏡下腎臓摘出術について説明します。側腹部3カ所に約2cmの切開を加えます。皮膚の下の筋膜と筋肉を同じように切開し、後腹膜の脂肪組織に包まれた腎臓を、内視鏡で観察しながら、細い鉗子を用いて周囲からていねいに剥離し、十分な長さの腎動脈、腎静脈、そして尿管をつけて取り出します。取り出す際には、術後の出血がないようにステープルのような器械で動脈と静脈を厳重に遮断し切断します。周囲組織、血管、尿管を切り離した後、腎臓を、下腹部の横切開創(6cmほど)から、体外に取り出します。傷跡は将来下着で隠すことができ、目立ちません。しかし、術中に出血などで内視鏡での摘出が困難な場合は、すみやかに従来の摘出術に変更することがあります。手術の所要時間は、3〜5時間程度です。また、本術式では、術後の疼痛が軽度なため麻酔は全身麻酔のみで、硬膜外麻酔は行いません。手術日翌日から歩くことができ、術後5日ほどで退院できます。手術後の傷痕は、ほとんど目立ちません。

5.腎臓摘出後
ドナーから腎臓を摘出すると、冷却した特殊な腎臓保存液を摘出した腎臓の腎動脈に注入し、腎臓内の血液を洗い流し、保存液に置き換えただちに冷却します。このようにするとドナーの手術の30分後に始まった腎移植レシピエント手術の吻合(血管などをつなぐ操作)準備ができるまで、腎臓を傷めることなく安全に保存することができます。

図.腎摘出術

表.手術術式の比較

傷の大きさ:(1)>(2)>(3) 手術時間の長さ:(3)>(2)>(1)
術後疼痛の強さ:(1)>(2)>(3)
 (1)腹部斜切開による腹膜外腎摘出術
 (2)傍腹直筋切開による腹膜外腎摘出術
 (3)鏡視下腎臓摘出術


3-16. 腎臓提供者の術後の痛みはひどいのですか
痛みの感じ方は人によりさまざまなため、一概にはいえませんが、ほとんどの方は、内視鏡的に腎臓を摘出した場合、手術翌日から痛み止めが不要になることが多いです。腹部斜切開による腹膜外腎摘出術の場合、硬膜外麻酔を手術後4日間使用しますので、その間痛みは比較的軽度です。

3-17. 腎臓提供者は何日くらい入院するのですか
内視鏡的に腎臓を摘出できれば、術後4〜5日の入院で十分であると考えられます。ただし、レシピエントの方の近くにいたいという患者さんには、8日間ほど入院していただくこともあります。腹部斜切開による腹膜外腎摘出術の場合、入院期間は手術後12日間程度です。

3-18. 腎臓提供者に腎移植の手術の合併症はありますか
創部の出血、皮下血腫、創部化膿あるいは離開、気胸、麻酔薬による薬剤性肝炎、膀胱炎、術後肺炎などが起こりうるとされていますが、頻度は非常に低いものです。

3-19. 腎臓提供者の残された腎臓が機能しなくなることはありますか
ごくまれに起こります。600人以上の方の生体腎移植を経験したある施設では、そのなかで1人だけ、術後20年近くを経て透析が必要になったドナーがおられたそうです。しかし一般的に、私たちが普通に生活するのに2個の腎臓は必要なく、全体の1/4(1個の半分)あれば十分といわれています。したがって2個とも十分な機能をもっていることが証明された患者さんの場合、残り1個の腎臓のはたらきで、問題が起きることはまれです。もちろん手術の前には、腎提供手術後も一側の腎臓のみで満足できる生活が今後送れることを十分検査し確認します。

3-20. 腎臓提供後の制限あるいは禁忌事項はありますか
とくにありません。ただし、手術直後は、ふだんより水分を多めに摂取していただいています。また、手術後の半年間ほどは手術した傷痕を日に焼かないほうが、痕がきれいになるといわれています。

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