脳死移植の実施について
1999年9月10日
日本移植学会
理事長 野本亀久雄
1999年2月28日、臓器移植法に基づく初めての脳死ドナーからの臓器提供が実現し、心臓、肝臓、腎臓2つ、角膜2つが6人のレシピエントに移植されました。続いて5月12日、第2例となる脳死移植が実施され、現在までに4人の脳死ドナーから臓器が提供され、移植されました。ドナーとなった方々の尊い「命の贈り物」を移植されたレシピエントたちは、現時点でいずれも順調に経過しています。臓器提供と移植の過程において、克服すべき課題はありますが、全体としてみれば成功に終わることができたと評価しています。
私たち移植学会は長年に渡り、日本に公正な移植医療を定着させるため、体制の整備と普及啓発に努めてきました。1997年10月、臓器移植法が施行され、諸外国に例をみない厳しい条件の下ではありますが、脳死からの臓器提供による移植が可能になりました。それから1年4カ月を経て、ようやく脳死ドナーによる臓器提供が実現したのです。慈悲の心を持って意思表示カードに署名されたドナーの方々、突然のご不幸の中で勇気ある決断をされたご家族の方々に深く感謝し、また敬意を表します。
脳死移植は始まったばかりです。心停止後の提供も可能な腎臓移植を含めて、大勢の患者さんが移植を待っておられます。法の施行後も、移植の機会を求めて大変な苦労をしながら海外に渡る患者さん、移植を待てずに亡くなる患者さんがおられます。私たちはできるだけ多くの市民の皆さんに移植医療について理解していただき、万一、不幸にして脳死という事態になられた場合に、病気に苦しんでいる人のため臓器を提供していただけるよう願っています。
同時に、私たちは、現行法が定める条件(脳死での臓器提供には、本人の書面による意思表示および家族の承諾を必要とする)の下では臓器提供していただく機会は非常に限られてしまい、移植を必要とする多くの患者さんを救うことは難しいと考えます。殊に現在、小児への脳死移植は事実上不可能です。2000年には臓器移植法の見直しが行われることになっています。これらの問題について十分な検証・議論を経て社会の理解が得られ、適正な法の改定が行われることを切望します。
私たち移植学会は、今後もできる限り多数の患者さんを移植によって救い、クオリティ・オブ・ライフを向上させることができるよう、一層の努力を傾けていきます。市民の皆さんのご理解とご協力をお願いいたします。