臓器移植法施行1年を迎えて1998年10月16日
日本移植学会
理事長 野本亀久雄
昨年10月16日に臓器移植法が施行されて以来、早くも1年を迎えるが、臓器移植法に基づく脳死者からの臓器提供は未だ1例もない。心臓、肝臓などの臓器移植を待つ患者さんをはじめ関係者は、脳死臓器移植が実現する日を待ち望んでいる。この間に、病状の悪化から外国での臓器移植を受け、あるいは不幸にして死亡された方もおいでになる。
臓器移植法は、書面による意思表示、かつ家族による同意という諸外国に例をみない厳しい要件を臓器提供に課している。日本移植学会は法律の審議過程で移植医療における閉塞状況を打開するものとして臓器移植法の成立を歓迎しながら、一方ではこのような厳しい要件のもとでは、極めて限られた臓器提供者しか得られないことを指摘してきた。しかし、これらの諸条件が社会一般の移植に対する考え方を反映したものである以上、これを遵守するのは国民としての務めであり、この条件のもとで脳死臓器移植が行われるべく最大限の努力を払い体制整備、啓発普及に努めてきた。
日本移植学会は、この1年間の状況を鑑みて、これまでの努力が不十分であったものと反省し、今後一層の努力をもって、社会の理解・協力が得られるよう、関係諸機関・団体と協力しつつ体制整備・啓発普及に努めることを表明する。また国民一般にあっては、日本の臓器移植法が極めて特異であり臓器の提供については今も諸外国より多大な恩恵を受けているという実情を理解していただき、臓器移植法の見直しにあたっては、臓器移植を必要としている方々、および臓器提供を希望する方々の人権に最大限配慮したかたちで臓器提供の要件、小児移植の問題などについて実際的な議論が行われることを切望する。